活動レポート

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不動産の道


### 「不動産の道」第4話: 保証会社の壁

健一が不動産の仕事を始めてから少し時間が経った頃、一件厄介な案件が舞い込んできた。物件は駅から徒歩5分、立地もよく、家賃も手頃なマンションだったが、入居希望者の審査がなかなか通らないという問題が発生していた。

その日、健一は先輩の大谷から「保証会社が通らないお客さんがいるから、ちょっと話をしてこい」と突然言われた。保証会社の審査は不動産業界では避けて通れない問題で、特に経済状況が不安定な人は通りにくい。それでも健一はこの案件を解決しようと気合を入れて臨んだ。

入居希望者の名前は*山口修二*。40代半ば、工場で派遣社員として働いている。派遣という形態や、過去のクレジットカード延滞履歴が原因で、複数の保証会社に審査を断られていた。

山口は健一に向かって、少し申し訳なさそうに言った。「実は、前の職場でクビになってから生活が苦しくて…それでクレジットカードの支払いが遅れてしまったんです。今は仕事も安定してるし、問題ないと思ってたんですけど…」

健一はその話を聞いて、すぐに断るわけにはいかないと思った。山口は誠実そうで、今は真剣に生活を立て直そうとしている様子が伝わってきた。しかし、保証会社の審査は厳格だ。いくら健一が良いと思っても、ルールは簡単には変えられない。

「山口さん、事情はよく分かりました。でも、今の状況だと、通常の保証会社では難しいかもしれません。」健一は正直に伝えた。

山口は肩を落とし、「やっぱり難しいですか…」とため息をついた。

健一は悩んだが、諦めるのは早いと思い、大谷に相談することにした。「先輩、このお客さん、何とかならないですか?保証会社がダメでも、他に方法はないんでしょうか?」

大谷は少し考えた後、ニヤリと笑ってこう言った。「保証会社が通らないからって、入居を諦めるのはまだ早い。地元の保証会社や、緩めの審査基準を持つ会社もある。彼の事情をもう一度丁寧に説明してみろ。誠実さが伝われば、道は開けるかもしれない。」

健一はその言葉に力を得て、いくつかの保証会社に再度山口の状況を説明し、交渉を始めた。過去の延滞履歴は確かにマイナスだったが、最近の安定した収入や、山口自身が新たにリスクを抑える方法を提示したことで、一つの保証会社が前向きに審査を考えるという返事を得た。

「やった!」健一は心の中でガッツポーズをしながら、山口に電話をかけた。「山口さん、審査通りそうです!少し条件はありますが、引っ越しは可能です。」

電話越しの山口の声は、驚きと感謝であふれていた。「本当ですか!?ありがとうございます、健一さん。本当に助かりました!」

健一は、この経験を通して、保証会社の審査に対する新しい視点を得た。ただ単にダメと言われて諦めるのではなく、違った角度から問題に取り組むことで、道が開けることを学んだ。