月間相続ニュースコラム(9月号) 相続放棄と限定承認の使い分け 相続手続きにおいて、「相続放棄」や「限定承認」という選択肢があることをご存じでしょうか? これらは、被相続人に負債があった場合や、財産の状況が不明な場合に活用される重要な制度です。 今月は、相続放棄と限定承認の基本と、それぞれの適用場面について解説します。 相続放棄とは? 相続放棄とは、被相続人の財産も負債も一切引き継がないことを選択する制度です。 特徴 1.完全に相続権を放棄 放棄をすると、その相続において財産も負債も一切引き継ぎません。次順位の相続人に権利が移ります。 2.家庭裁判所への申請が必要 相続開始を知った日から3か月以内に、家庭裁判所での手続きが必要です。 適用される場面 •被相続人に多額の負債がある場合。 •財産よりも負債が明らかに多いとき。 •トラブルや煩雑な手続きを避けたい場合。 限定承認とは? 限定承認とは、被相続人から引き継ぐ負債を、相続した財産の範囲内で返済する制度です。 特徴 1.財産を超える負債の支払いは不要 相続財産を超える負債については支払う義務がありません 2.相続人全員の同意が必要 限定承認を行うには、相続人全員が同意し、家庭裁判所に申請する必要があります。 3.プラスの財産が残る可能性 財産を売却して負債を清算した後に、余剰が出た場合は相続人に分配されます。 適用される場面 •財産と負債のどちらが多いか分からない場合。 •価値が不明な財産(不動産、骨董品など)がある場合。 •価値のある財産を残しつつ負債を清算したい場合。ケーススタディ:限定承認の活用例 事例 Cさんは亡くなった親から、土地と多額の負債を相続することになりました。 この土地の価値が不明で、負債を上回るかどうかが分からない状況でした。 解決策 •限定承認を選択し、土地を売却。 •売却益で負債を清算し、余剰分を相続財産として受け取りました。 教訓 限定承認は、リスクを最小限に抑えながら相続手続きを進めるための有効な選択肢です。
月間アドバイス:相続放棄・限定承認を検討する際の注意点 1.期限を守る 相続放棄・限定承認は、どちらも3か月以内に家庭裁判所へ申請する必要があります。期限を過ぎると単純承認(すべてを相続する形)とみなされます。 2.専門家のアドバイスを受ける 特に限定承認は手続きが複雑で、相続人全員の同意が必要です。弁護士や司法書士に相談することでスムーズに進められます。 3.負債や財産の全体像を把握する 相続開始後は速やかに被相続人の財産や負債を調査し、適切な判断を下すことが重要です。 まとめ 相続放棄と限定承認は、負債が絡む相続で大きな助けとなる選択肢です。 ただし、どちらを選ぶべきかは財産や負債の内容、家族構成によって異なります。 この機会に、相続の基本を理解し、将来に備えた準備を進めてみてください。 次号では、「共有名義不動産のトラブル解決策」について詳しく解説します。お楽しみに! この記事に関するご相談やサポートのご希望は、 一般社団法人大阪府相続支援協会までお気軽にお問い合わせください!
